No kidding!
得意げに
私がシンガポールに駐在していた時ですからもう20年以上も前のことになります。
当時の私の秘書であったセシリア・フーさんといういう女性に、その前の晩に起きた失敗談を話した時、彼女はその愛くるしい目を丸くして「No kidding」と叫びました。
「冗談でしょ?」という意味だとすぐにわかりましたが、その時まで同じ意味のことを表現するのに「You must be joking!」一辺倒だった私にとってはとても新鮮に感じられました。
それ以来、カジュアルな会話の中では「No kidding!」を連発して、あたかもネイティブレベルの英語を使いこなしている感に浸っていました(今思うと恥ずかしい話ですが)。

何かおかしい
ところが何か変だなと感じ始めました。
私の話している相手が私の話の内容が失敗談や冗談でもないのに「No kidding!」とぼそぼそと言っているのです。
最初はあまり気にしていませんでしたが、次第にその使い方が気になってしょうがなくなり、遅ればせながら辞書を引いてみました。
すると「相手の言っていることに対してのNo kidding!は冗談でしょうで、自分の言っていることへのNo kidding!は冗談じゃない、本当ですよ」と書いてありました。
最初は何を言っているのか分かりませんでしたが、しばらくしてその違いを身に染みてわかるようになりました。
恥をかいてなんぼ
私の話し相手が使っている「No kidding!」は私の話したことにではなく、自分が話したことに向けられているのであって、彼または彼女が意味せんとすることは「私の話はまじですよ、本当のことですよ」という意味なんだと分かりました。
それがわかった時からはそれ以前と比べて、私の勝負フレーズである「No kidding!」の使用頻度は格段に減りました。
それまで得意げに調子にのって使ってきたことがトラウマになり、どうしても「Nokidding!」を口にするのに腰が引けてきました。
もしかしたら自分の使っている英語の多くは頓珍漢で、話の相手は心の中では笑っているのではないか?などと日頃思ったりすることもありますが、「恥をかいてなんぼ」の精神で行くしかありません。
ただ、偉そうにかつ得意げに話すのは少し控えようと思います。