NY駐在⑤
K子さん、furのコートで颯爽と
あくまでも推論ですが、「トレーニングした内容の4分の1しかお客様に伝わっていないのでないか?」という疑問は私たちの中で徐々に大きくなっていきました。
当時私が最も信頼と尊敬を置いていた仲間にK子さんというセールマネジャーがいました。
彼女は日本の名門女子大を卒業された後LAに移ってこられ、しばらくしてから私たちの化粧品会社のLA支店に勤務されていて、アジア市場開拓のパイオニア的な存在でした。
大変おきれいな方であり、おしゃれなご婦人でもありました。
K子さんがLAから厳冬期のNYに出張してくるのは毎年の恒例行事となっていました。
何故かと言うと、彼女ご自慢の高級毛皮のコートはいつも温暖なLAでは着る機会がなく、東海岸の寒さ何するものぞと、まぶしい限りの毛皮のコートをまとい、毎冬NYで1回部門ミーティングを開催するのが年中行事となっていたからでした。

そんなことできるの?
K子さんは私たちが務める化粧品会社をこよなく愛していて、何とかこのアメリカで質量ともに成功させたいという思いで日夜身を粉にして働いていました。
そんなK子さんの悩みの一つが化粧品の教育でした。
彼女や中国人や韓国人のアカウントエグゼクティブ(いわゆる化粧品店の担当者、以下AE)と極寒のNYで喧々諤々のディスカッションをして、何とか解決策を見出そうとしましたがなかなか良いアイデアが出てきませんでした。
そんな中で全く思いもよらなかったアイデアがひらめいたのでした。
言葉に合わせて化粧品店の担当を決めようというアイデアでした。
「何だあたりまえのこと」と思われるかもしれませんが、LAにいる韓国人のAEがサンフランシスコやシアトルの韓国系の店に、サンフランシスコの香港人のAEがLAやサンディエゴの香港系の店に毎月飛行機に乗って、ホテルに泊まりながらの販売活動をしようと言うのです。
お店の数がまだ少なく、AEの人数も十分でない当時の状況からすると、お金も手間もかかるまさに非効率極まりないやり方だったのでした。
肉体的にも過酷極まりないものと思われました。